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✓ Iメッセージは「私は〜と感じる」と自分を主語にして伝える方法。アメリカの臨床心理学者トマス・ゴードン博士が考えた
✓ 相手の行動を注意したいときは、①相手の行動(責めずに事実だけ)②自分への具体的な影響 ③自分の気持ちの3つを入れる
✓ 型は「〜されると(行動)、〜になって(影響)、〜と感じる(気持ち)」
✓ 「どうすべきか」は言わず、相手に考えてもらうのがポイント
✓ 相手が反発したら、言い返さずに相手の気持ちを聴く側に切りかえる
「何回言ったらわかるの!」「なんでいつも遅れるんですか」。言ったあとで、相手がむっとして空気が悪くなった経験はありませんか。あなたは正しいことを言っているのに、相手は動いてくれない。それどころか、言い訳や反論が返ってくる。そんなときに役立つのが「Iメッセージ」という伝え方です。
この記事では、Iメッセージを考えたトマス・ゴードン博士の団体(Gordon Training International)と、日本でその方法を広めている親業訓練協会の情報をもとに、Iメッセージの作り方と、職場・恋愛・子育ての場面別の例文をまとめました。YOUメッセージから言いかえるコツや、うまくいかないときの対処法も紹介します。
- IメッセージとYOUメッセージは、何がちがうの?
- Iメッセージは、どんな順番で組み立てればいい?
- 職場の部下や同僚に、角を立てずに注意するには?
- 恋人やパートナー、子どもには、どう言えばいい?
- Iメッセージを使っても相手が反発したら?


読み飛ばしガイド
目次
Iメッセージとは?YOUメッセージとのちがい
結論からいうと、Iメッセージとは「私(I)」を主語にして、自分の気持ちや考えを正直に伝える話し方です。考えたのは、アメリカの臨床心理学者トマス・ゴードン博士(1918〜2002年)。博士が1962年に始めた親向けのコミュニケーション講座「親業訓練(Parent Effectiveness Training:P.E.T.)」の中心となるスキルのひとつです。
親業訓練協会によると、日本では1979年に初めて親業訓練講座が開かれ、今では親子向けだけでなく、教師向けや看護職向け、若者向けなどの講座も開かれています。日本では「わたしメッセージ」とも呼ばれます。
これに対してYOUメッセージは、「あなた(YOU)」が主語になる言い方です。「(あなたは)早くしなさい」「(あなたは)いつも遅い」のように、相手への命令や評価、批判になりやすいのが特徴です。
| くらべる点 | YOUメッセージ | Iメッセージ |
|---|---|---|
| 主語 | あなた | 私 |
| 伝えている中身 | 相手への命令・評価・批判 | 自分の気持ちと、困っている理由 |
| 例 | 「会議に遅れないでください」 | 「会議が始められず、みんなを待たせてしまうので、私は焦ってしまう」 |
| 相手の受け取り方 | 責められた・決めつけられたと感じやすい | 相手の事情として受け取りやすい |
| 行動を変えるかどうか | 言われたからしぶしぶ、になりやすい | 相手が自分で考えて決める余地がある |
ゴードン博士の団体(Gordon Training International)の記事では、相手に行動を変えてほしいなら、その行動が実際にどんな影響を与えているのかを伝えるべきだ、と説明されています。人は、変える理由に納得できてはじめて行動を変えやすくなるからです。
Iメッセージの作り方|「行動・影響・気持ち」の3つの要素
相手の行動に困っていて、それを伝えたいときに使うIメッセージを、ゴードン・メソッドでは「対決のIメッセージ(Confrontive I-Message)」と呼びます。ここでいう「対決」はけんかではなく、問題に正面から向き合うという意味です。ゴードン博士の団体によると、このIメッセージは次の3つの要素でできています。
| 要素 | 中身 | ポイント |
|---|---|---|
| ① 行動 | 困っている相手の行動を、短く、責めずに説明する | 見たこと・聞いたことだけを言う。「いつも」「だらしない」などの評価を入れない |
| ② 影響 | その行動が自分に与えている、目に見える具体的な影響 | 時間・お金・手間・予定など、実際に起きていることを言う |
| ③ 気持ち | その影響によって生まれる、自分の本当の気持ち | 怒りの奥にある「不安」「困っている」「がっかり」などを探す |
日本語にすると、「(相手が)〜すると、(私は)〜になって、〜と感じる」という型になります。順番は入れかえてもかまいません。
Iメッセージの作り方メモ
① 行動:「書類の提出が締め切りを過ぎると」
② 影響:「私が上司への報告を先にのばすことになって」
③ 気持ち:「とても困ってしまうんです」
→ 「書類の提出が締め切りを過ぎると、私が上司への報告を先にのばすことになって、とても困ってしまうんです」
気持ちだけを伝える「私は悲しい」「私は困っています」は、3つの要素のうち1つしか入っていません。ゴードン博士の団体の記事でも、気持ちだけを伝えると相手は「なぜ?」「私が何をしたの?」ととまどってしまう、と説明されています。行動と影響までそろえてはじめて、相手は何が問題なのかを理解できます。

Iメッセージの4つの種類|注意するときだけじゃない
Iメッセージは、相手に注意するときだけの道具ではありません。ゴードン博士の団体では、問題がないときに使うIメッセージも紹介しています。
| 種類 | 使う場面 | 例文 |
|---|---|---|
| 対決のIメッセージ | 相手の行動で困っているとき | 「連絡がないまま帰りが遅くなると、事故にあったんじゃないかと心配で眠れないの」 |
| 宣言のIメッセージ | 自分の考えや好みを知ってもらいたいとき | 「私は、会議はできるだけ短く終わらせたいと考えています」 |
| 予防のIメッセージ | この先問題が起きそうなとき、先に自分の希望を伝える | 「来週は締め切りが重なるので、急ぎの仕事は今週中にもらえると助かります」 |
| 感謝のIメッセージ(肯定のわたしメッセージ) | 相手の行動をうれしく思ったとき | 「資料を早めに送ってくれたので、落ち着いて準備ができて本当に助かったよ」 |
とくに感謝のIメッセージは、ふだんから使っておくと関係がよくなります。「えらいね」「さすがだね」というほめ言葉は、相手を評価するYOUメッセージに近いものです。それよりも「〜してくれて、私はうれしい」と自分の気持ちとして伝えるほうが、相手は素直に受け取りやすくなります。親業訓練協会のサイトでも、肯定のわたしメッセージで温かい関係を深める例が紹介されています。
職場で使えるIメッセージの例文
職場では、上司から部下、同僚どうし、部下から上司など、立場によって言いにくさが変わります。相手を評価せず、自分の仕事に起きている影響を伝えると、立場に関係なく使いやすくなります。
| 場面 | YOUメッセージ | Iメッセージ |
|---|---|---|
| 部下の遅刻 | 「また遅刻?社会人なんだから時間を守って」 | 「朝礼に間に合わないと、その日の段取りを伝えなおすことになって、私は少し焦ってしまうんだ」 |
| 報告がない | 「なんで報告しないの?」 | 「進み具合がわからないと、お客さんに聞かれたときに答えられなくて、不安になるんです」 |
| 同僚の私語 | 「うるさいから静かにしてください」 | 「近くで話し声がすると、電話の相手の声が聞き取れなくて困っているんです」 |
| 仕事の丸投げ | 「自分でやってください」 | 「今日はこの仕事で手がいっぱいで、引き受けると両方とも締め切りに間に合わなくなりそうで心配です」 |
| 上司の急な指示 | 「いつも直前に言わないでください」 | 「当日に依頼をいただくと、ほかの予定を組みなおすことになって、質が落ちないか不安なんです」 |
| うれしかったとき | 「よくやった、えらい」 | 「急な対応をしてくれたおかげで、お客さんとの約束を守れて、本当に助かりました」 |
上司に伝えるときは、「不安です」「心配です」と気持ちを伝えたうえで、「どうしたらいいか相談させてください」と続けると、相手を責めずに話し合いに進めます。
恋愛・夫婦で使えるIメッセージの例文
恋人やパートナーとの会話では、つい「あなたはいつも〜」というYOUメッセージが出がちです。「いつも」「全然」といった決めつけの言葉をやめて、具体的な出来事と自分の気持ちに置きかえてみましょう。
| 場面 | YOUメッセージ | Iメッセージ |
|---|---|---|
| 連絡がない | 「なんで連絡くれないの?」 | 「夜まで連絡がないと、何かあったのかなと心配で落ち着かないんだ」 |
| 約束に遅れる | 「いつも遅刻するよね」 | 「待ち合わせに30分遅れると、予約したお店に間に合うか不安で、ちょっと悲しくなる」 |
| 家事の分担 | 「少しは手伝ってよ」 | 「平日に洗い物が全部私になると、寝る時間がおそくなって、正直つらいと感じてる」 |
| スマホばかり見る | 「話聞いてる?」 | 「話しているときにスマホを見ていると、聞いてもらえていない気がしてさみしくなる」 |
| うれしかったとき | 「やればできるじゃん」 | 「夕飯を作っておいてくれて、帰ってきてほっとしたよ。ありがとう」 |


子育てで使えるIメッセージの例文
Iメッセージは、もともと親子のコミュニケーション講座から生まれた方法です。子どもに「〜しなさい」と命令する代わりに、親が困っていることを正直に伝え、どうするかを子ども自身に考えてもらうのがねらいです。
| 場面 | YOUメッセージ | Iメッセージ |
|---|---|---|
| おもちゃの片づけ | 「早く片づけなさい」 | 「床におもちゃがあると、ふんで転びそうで、お母さんはこわいな」 |
| 大きな声で騒ぐ | 「うるさい!静かにして」 | 「大きな声がすると、電話の相手の声が聞こえなくて困っちゃうんだ」 |
| 帰りが遅い | 「何時だと思ってるの!」 | 「約束の時間をすぎても帰ってこないと、何かあったんじゃないかって、すごく心配したよ」 |
| 宿題をしない | 「宿題やったの?」 | 「夜おそくに宿題を始めると、寝る時間がおそくなって、明日の朝起きられるか心配なんだ」 |
| 手伝ってくれた | 「えらいね」 | 「お皿を運んでくれたから、すごく早く準備ができて助かったよ」 |
子どもが小さいうちは、「影響」の部分を子どもにもわかる言葉にするのがコツです。「床にあるとふんで転びそう」のように、目に見える出来事にすると伝わりやすくなります。
Iメッセージをうまく伝えるコツと注意点
1. 「どうすべきか」は言わない
ゴードン博士の団体は、相手には「何をすべきか」ではなく「なぜ困っているのか」を伝え、相手が助け手になれる機会をつくるようすすめています。「だから早く来て」と解決策までつけると、結局は命令(YOUメッセージ)にもどってしまいます。
2. 怒りの奥にある本当の気持ちを探す
Iメッセージがいつも怒りの表現になってしまう人は、本当の気持ちに気づけていない可能性がある、とゴードン博士の団体は指摘しています。「自分は何を失うのがこわいのか」と考えてみると、「心配」「不安」「がっかり」など、怒りの奥の気持ちが見つかりやすくなります。
3. 「私は」をつけただけのYOUメッセージに注意
「私は、あなたがだらしないと思う」は、主語が「私」でも中身は相手への評価です。相手の性格や人柄ではなく、具体的な行動を取り上げているかを確認しましょう。
4. 相手が反発したら「聴く」に切りかえる
Iメッセージを伝えると、相手が言い訳をしたり、むっとしたりすることがあります。ゴードン博士の団体は、そのときは言い返さずに、相手の気持ちを受け止めて言いかえす「能動的な聞き方(アクティブリスニング)」に切りかえるよう説明しています。相手が「わかってもらえた」と感じると、自分から行動を変えやすくなるからです。気持ちが落ち着いたら、もう一度Iメッセージを伝えます。
5. 毎回うまくいくとは考えない
Iメッセージは相手を思いどおりに動かすテクニックではありません。ゴードン博士の団体も、すべてのIメッセージがうまくいくと期待しないように、と書いています。相手にも事情があることを前提に、話し合いのきっかけにするくらいの気持ちで使うと、関係がこじれにくくなります。
✓ 相手の行動で、自分が実際に困っているとき
✓ 関係をこわさずに要望を伝えたいとき
✓ 感謝や気持ちを素直に伝えたいとき
・命にかかわるなど、すぐに止める必要があるとき
・相手が強く動揺していて、話を聞ける状態でないとき(先に聴く)
・相手を操作するために気持ちを大げさに言うとき
よくある質問
Q. Iメッセージを使えば、相手は必ず行動を変えてくれますか?
A. 必ず変わるわけではありません。Iメッセージは、行動を変えるかどうかを相手に考えてもらう伝え方です。反発が返ってきたら相手の気持ちを聴き、そのうえで話し合うことが大切です。
Q. 目上の人にもIメッセージを使っていいですか?
A. 使えます。相手を評価しない伝え方なので、上司や先輩にも向いています。ていねい語で「〜だと、〜になってしまい、不安に感じています」のように伝え、「ご相談させてください」と続けると自然です。
Q. 英語の「I feel〜」とはちがうのですか?
A. 気持ちを伝える点は同じですが、ゴードン・メソッドの対決のIメッセージは、気持ちに加えて「相手の行動」と「自分への具体的な影響」を入れるのが特徴です。気持ちだけでは何が問題か伝わりにくいためです。
Q. Iメッセージはどこで学べますか?
A. 日本では、親業訓練協会がゴードン・メソッドの講座を開いています。協会のサイトでは、協会が認定したインストラクターだけが講座を提供していると案内されています。書籍で学ぶなら、ゴードン博士の『親業』(大和書房)などがあります。
まとめ|Iメッセージは「行動・影響・気持ち」の3点セットで伝える
Iメッセージは、トマス・ゴードン博士が考えた「私」を主語にする伝え方です。相手の行動で困っているときは、①責めない言葉で相手の行動 ②自分への具体的な影響 ③自分の気持ちの3つを入れ、「どうすべきか」は相手にゆだねます。相手が反発したら、言い返さずに聴く側に回りましょう。
注意するときだけでなく、感謝や自分の考えを伝えるときにも使えます。まずは身近な人に「〜してくれて、私はうれしい」という感謝のIメッセージから始めてみてください。
