2020年本屋大賞を獲得した今話題の本、凪良ゆうさんの「流浪の月」を読みたいと思っている方も多いのではないでしょうか。
と思われている方に向けて、「流浪の月」の小説を読んだ感想をまとめていきます!
これから本を買ってみようと思っている方はとくに参考にしてみてください。
こんな人におすすめ!
- 哲学などの考えさせられる話が好きな方
- 形にとらわれない生き方を考えたい方
- ヒューマンドラマが好きな方
目次
「流浪の月」はどんな話?映画化も?
全国に書店員が今1番売りたい本を決める、2020年本屋大賞を獲得し、第41回(2020年)吉川英治文学新人賞候補作にもなった今話題の本です。
最後まで読むと、タイトルの意味もわかるようになります!
あらすじの紹介
ネタバレの前に、あらすじを紹介しましょう。
あらすじ
せっかくの善意をわたしは捨てていく。
そんなものでは、わたしはかけらも救われない。
愛ではない。けれどそばにいたい。
新しい人間関係への旅立ちを描き、
実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。
わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。
それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。
再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人間を巻き込みながら疾走を始める。
新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
主人公の女の子、更紗(さらさ)は両親と幸せに暮らしていたのですが、両親を失ってしまいます。
更紗は伯母の家で育てられることになりますが、今までの暮らしとは異なるルール、いづらさを感じ、自ら家を抜け出し、公園で出会った19歳の大学生の佐伯文(ふみ)と一緒に暮らすことになります。
しかし、楽しいときは続かず、文は少女の誘拐犯として、更紗は少女誘拐事件の被害者として引き離されてしまいます。
そんな2人がどんなふうに考え、生きてきたのか、善意とはなんなのかを考えさせられるお話です。
作者の凪良ゆうはどんな人?
作者の凪良(なぎら)ゆうさんは、BL作品を多く書かれている小説家でした。
ですが、今回はBL要素を含んでいない小説で賞の受賞に至りました。
『流浪の月』
— 凪良ゆう (@nagira_yuu) April 7, 2020
2020年本屋大賞を受賞しました。
刊行からずっと応援してくれた書店員の皆さま、読んでくださった皆さま、東京創元社の皆さま、版元の垣根を応援してくれた各社担当編集の皆さま、ありがとうございました! pic.twitter.com/nE9gOfLKZV
映画化に期待!?
2012年に本屋大賞を受賞した三浦しをん「舟を編む」など、過去の本屋大賞作品は映画化・映像化されているものも多いので今回も期待が高まっています。
「流浪の月」の魅力は?
本屋店員さんがおすすめしたい流浪の月の魅力はなんでしょうか?
おすすめしたい魅力ポイントを紹介していきます!
重いテーマなのに読みやすい
主人公となる更紗は、9歳のときの少女誘拐事件の被害者として、文はロリコンの少女誘拐犯として世間からレッテルを貼られ、10年たっても自由になれない生きにくい人生を送っています。
更紗は新しい恋人との関係性、職場での扱われ方、などずっと苦しい思いを抱えています。
文も少女好きと思われ、家族からも疎外され、こっそりと生活をしています。
それぞれの抱える苦悩や境遇はとても暗く、重たいものがありますが、美しく表現が多く、読みにくさは感じられません。
2人の離れていてもお互いを思いやっている気持ち、など美しい言葉で紡がれており独特の世界観を作り上げているのです。
善意とはなにか、真実とはなにか考えさせられる
この本では考えさせられるテーマが多く登場しますが、善意とはなにかというのが大きなテーマとなっております。
自分が善意の気持ちで行っていることが、その人にとって必ずしもよいことなわけではない、というのをとても考えさせられます。
世間から幼い頃誘拐に遭い、「かわいそうな被害者の少女」とレッテルをはられた更紗ですが、本人にとってみれば誘拐されたわけでもなければ、暴力などの被害にあったわけでもなく、むしろ楽しい時間を過ごしていたのです。
更紗に接してくる人々は、更紗のことを思って善意を向けてきますが、更紗にとっては善意でもなんでもないのです。
真実は本人たちにしか分からない。
「流浪の月」ネタバレ感想
ではここからは、小説のネタバレも含めた感想をまとめていきます!
ネタバレを知りたくない人は、先に進まないことをおすすめします。(笑)
更紗に本当に起きていたこと
自由な家庭、外から見ると変わり者と思われるような両親のもとで更紗は育ちました。
しかし、両親を失って、伯母の家で暮らすこととなり、我慢をして変わり者と思われないように「普通に」過ごしていました。
もっとも嫌だったことは、伯母の息子の孝弘か夜にいたずらをされていたことです。
家に帰るのが嫌になった更紗は、公園で出会った文から
「うちにくる?」
と言われ、自分から文についていって、一緒に暮らし始めました。
自由な更紗と、自由を受け入れてくれる文はお互いに必要な存在となりました。
しかし、文と2人で動物園に出かけてしまったことで、通報され、文が少女誘拐の犯人として逮捕されてしまいます。
更紗は世間から、
「暴力やいたずらをされたのだろう」
「ストックホルム症候群になってしまったのだろう」
と何を言っても受け入れてもらえず、かわいそうな被害者と決めつけられてしまいます。
家に戻ってきた更紗は、また夜に伯母の息子にいたずらをされそうになります。
更紗は孝弘を酒瓶で殴りつけ、伯母と伯父は孝弘の行っていたことを知るのでした。
しかし、更紗は深く傷ついており、「自分にいたずらをしていたのは文ではなく、孝弘であるという」事実を大人に告げることができず、「事件のせいで不安定になっている」というふうに解釈をされてしまうのです。
再開によって崩れ出す日常
そして時は進み、15年後。
更紗は一緒に住んでいる彼氏の亮がいました。
亮も本当に更紗を理解しておらず、かわいそうな被害者としてしか理解していませんでした。
そしてひょんなことから文と再会をするのです。
文は夜に営業する喫茶店のcalicoで働いていました。
更紗は頻繁にcalicoに通うようになり、彼氏の亮からは浮気を疑われてしまいます。
そこから、亮に暴力をふるわれるようになってしまったのです。
ぼろぼろになった更紗は文のもとへ逃げます。
文は同じように
「店に来る?」
と声をかけ、店に更紗をかくまってくれました。
この後、更紗は夜逃げをするように亮と住んでいた家を出ていき、文の住んでいるマンションの隣の部屋に引っ越すのです。
しかし、その後も逆恨みをした亮は、少女誘拐を起こした犯人の文の今をネットに書き込みをしたり、誘拐犯と被害者が一緒に暮らしているなどと新聞社に伝えたりするのです。
世間の目から見れば、かつての誘拐犯と被害者が隣同士で住んでいることは、被害者の洗脳がとけていない=かわいそうな子として見られてしまうのです。
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2人の選ぶ結末
更紗視点で書かれてきた物語は、文の抱えていた真実の視点に変わります。
少女誘拐を起こし、小児性愛、ロリコンと言われた文は、本当は病気を抱えていたのです。
それは、身体の成長が止まる病気で、大人の女性に対して嫌悪を持つだけでなく、未発達な自分の体に嫌悪と羞恥と恐れを抱えていたのです。
異性とつながることのできない自分を欠陥品だと思い続けていました。
まじめな母親のもとで育った文は、自分の欠陥のことを言い出せず、精神的にも追い詰められていました。
更紗と出会って生活をしたことで自由を知ることができた、文も更紗と出会ったことで救われたのでした。
実は文が更紗の住んでいるところの近くにお店を開いていたのも偶然ではなく、更紗がいることを知って、近くに開いたのでした。
2人は、今住んでいるところにはいられなくなり、一緒に別の場所で暮らすことになります。
ーーー
「わたしは文に恋をしていない。
キスもしない。
抱き合うことも望まない。
けれど今まで身体をつないだ誰よりも、文と一緒にいたい。」
ーーー
恋人と言えるような関係性ではないけれど、2人は一緒に生きることを選ぶのでした。
【流浪の月】あらすじ・ネタバレ感想!|まとめ
2020年本屋大賞作品の「流浪の月」のあらすじとネタバレ感想をまとめてきました。
流浪の月が気に入った方は、同じ著者の「わたしの美しい庭」もおすすめです!
ぜひ、ほかの本も読んで凪良ゆうさんの世界観をたっぷり味わいましょう!